よくあるご質問

― 無痛分娩について ―

  • Q.1

    順天堂医院での分娩数と無痛分娩の実績について教えてください。

    A.

    分娩方法の推移

    当院では地域周産期センターとして高度医療を提供する役割を担っており、帝王切開率は全国の病院平均24.8%より高く、2016年では30.1%でした。帝王切開の約半数は経腟分娩中に必要となった緊急帝王切開です。鉗子・吸引分娩が24時間無痛分娩を受け入れ後に増加しました。

    総分娩数と無痛分娩の推移

    当院では地域周産期センターとして高度医療を提供する役割を担う一方、多様化するニーズに応えて、2003年より硬膜外麻酔による無痛分娩を計画分娩で行って参りました。2014年4月からは産科専門麻酔科医が常時待機し、自然陣発後の無痛分娩に対応しております。無痛分娩を希望される産婦さんの数は急増して、2016年の実績では経腟分娩の78%が無痛分娩でした。

  • Q.2

    順天堂医院での分娩予約について教えてください。

    A.

    順天堂医院では、妊娠8週になり分娩予定日を決定してから、分娩予約を受け付けています。当院産科外来を受診した際に申し込まれるか、産科セミオープンシステムを利用して連携施設を受診して申し込んでいただきます。各月を上旬・下旬に分けて申し込みを受け付けています。申し訳ございませんが、受付に上限を設けておりますので、「当院の分娩予約状況について」でご確認下さい。

  • Q.3

    骨盤位(さかご)、双胎(ふたご)、前回帝王切開でも無痛分娩はできますか?

    A.

    現在順天堂医院では、骨盤位(逆子)、双胎(双子)、前回が帝王切開の方には、基本的には帝王切開によって分娩を行っていますので、無痛分娩はできません。

  • Q.4

    順天堂医院での無痛分娩の方法について教えてください。

    A.

    順天堂医院では、無痛分娩の方法として硬膜外麻酔単独での方法、硬膜外麻酔に脊椎麻酔を併用する方法の2種類を、状況に応じて使い分けています。

    1. 硬膜外麻酔による無痛分娩(Epidural Analgesia):

    硬膜外麻酔単独での無痛分娩は、無痛分娩の標準的な方法として長い歴史があります。脊椎の中硬膜外腔というスペースに細い管(硬膜外カテーテル)を挿入し、そこから局所麻酔薬を注入する方法です。図のように背中から麻酔の注射を行う方法で、アメリカでは硬膜外腔を意味するEpiduralが無痛分娩の代名詞として使われるくらい一般的な方法です。日本では硬膜外麻酔は腹部の手術などの術後鎮痛にも利用されており、硬膜外麻酔と言うと術後鎮痛をイメージする方が多いかもしれません。

    2. 硬膜外麻酔に脊椎麻酔を併用する方法(CSEA: Combined Spinal-Epidural Analgesia):

    最近は、アメリカでも硬膜外麻酔の前に脊椎麻酔を併用する施設が増えています。脊椎麻酔は、硬膜外腔よりさらに奥にあるくも膜下腔というスペースに直接、局所麻酔薬を注入する方法です。くも膜下腔には脊髄が存在し周囲が脳脊髄液で満たされていますので、ここに投与された薬剤は直ぐに脊髄に作用し、迅速で確実な鎮痛が得られます。脊椎麻酔は、虫垂炎や帝王切開の手術の際の麻酔法として一般的な方法です。2種類の麻酔法を組み合わせて、お互いの長所を利用するわけですが、背中から注射をするのは1回だけです。

    硬膜外麻酔の際の体位

    硬膜外カテーテルを挿入する際には、ベッドの上に座るか、横向きになって背中をまるめていただきます。その後、背中を消毒してから、刺入部を細い針で局所麻酔します。この時、ほんの少し痛みますが、麻酔後はほとんど痛くありませんので、怖がらずに良い姿勢をとっていただければ、カテーテルの挿入は5分程度で終わります。麻酔の最中に陣痛が来てしまったときは、声に出してもかまいませんが、なるべく動かないようにしてください。

    硬膜外麻酔

    脊椎麻酔脊椎麻酔

  • Q.5

    24時間体制での無痛分娩のメリットを教えてください。

    A.

    現在、順天堂医院では24時間体制で産科麻酔担当の麻酔科医が配置されていますので、夜間や休日でも、緊急の帝王切開や無痛分娩に麻酔科医の対応が可能であり、無痛分娩について産科麻酔外来であらかじめ説明を受けて同意書を提出して下されば、特別な申し込みも計画分娩(分娩誘発)も必要はありません。分娩誘発についてはQ&A7,8をご覧ください。

    またQ&A9にも書きましたが、無痛分娩は開始するタイミングが重要となりますので、確実に分娩が進行する自然陣痛発来後の無痛分娩は、産婦さんの満足度も高いとの報告があります。しかし稀に分娩の進行が極端に早い場合には、背中からの注射の体位がとれない、分娩までに有効な鎮痛が得られないなどの理由で、麻酔なしでの分娩をお勧めすることがあります。

    他方で、より確実に無痛分娩を受けたいとご希望なさる産婦さんには早いタイミングで開始することもできます。そのような場合でも対応できるのが現在の24時間無痛分娩体制ですが、やはり分娩の進行がとても早い場合には麻酔が間に合わないことがあることもご理解ください。

  • Q.6

    産科麻酔外来について教えて下さい。

    A.

    当院で分娩をご希望の妊婦さんには麻酔スクリーニングといって、妊婦さんの既往歴や検査結果から、無痛分娩・帝王切開を安全に行うことができるかどうかを麻酔科医が確認するために、産科麻酔外来の受診をお願いしています。順天堂医院で妊婦健診を受ける方も、産科セミオープンシステムを利用して連携施設で妊婦健診を受ける方も、妊娠36週ごろまでに予約の上産科麻酔外来を受診していただいています。無痛分娩を希望されていない妊婦さんでも、緊急帝王切開や陣痛が辛くて急遽無痛分娩を希望された場合にも、より安全に麻酔を行うことが可能となります。無痛分娩に興味がある妊婦さんには、無痛分娩の手順やメリット・デメリットについて説明し、無痛分娩に関する理解を深め、安心して分娩に望んでいただくこと期待しています。説明を十分に聞き、分からない点について質問することで、ご自身のイメージと実際とギャップを少なくしておくことも重要と考えます。無痛分娩を希望するあるいは前向きに考えている妊婦さんには、このときに無痛分娩の説明・同意書をお渡します。

  • Q.7

    どのような場合に分娩誘発(計画分娩)を行うのですか?

    A.

    分娩誘発(計画分娩)とは陣痛のない状態から子宮収縮薬等を使用して分娩を誘発する方法です。陣痛が始まらずに破水してしまう前期破水や、分娩予定日を過ぎても陣痛が来ずに過期妊娠(予定日を2週間以上過ぎてしまう)の可能性がある場合、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全など早期に妊娠を終結するほうが良いと判断された場合に行います。さらに前回の分娩の進行が早くご自宅が遠い経産婦さんには、自然陣痛後に病院まで間に合わないなどのリスクがある方には、産婦人科医と相談の上、計画分娩を予定することもあります。これを「急産(墜落分娩)予防」といいます。頸管熟化(子宮口が開く)していることが条件になりますので、早い時期から誘発する日を決めることはできません。分娩誘発を予定しても、入院日前に陣痛が開始してしまうこともあります。

  • Q.8

    実際の分娩誘発(計画分娩)の流れを教えて下さい。

    A.

    原則として子宮収縮薬使用の1日前に入院します。外来でお渡しした「分娩誘発・促進剤使用の説明・同意書」にご自身で署名し、入院時に病棟スタッフへお渡しください。子宮頸管(子宮の出口)が十分に開いていない(未成熟)の方には、当日夜にダイラパン®を使用して子宮頸管を拡張させます。子宮収縮薬使用の当日朝ダイラパンを抜去して、オキシトシンやプロスタグランジンF2αという子宮収縮薬を点滴で投与します。子宮収縮薬の反応は産婦さんごとに異なり、当院の方法では子宮の出口(頸管)が開いてしている(熟化している)経産婦さんは、計画分娩開始当日に約90%が出産できますが、初産婦さんではその可能性は約50%です。熟化していない産婦さんでは、2~3日かけて分娩することを考えておく必要があります。また約10%の方が帝王切開に移行します。よくお読みいただきご不明な点は、妊婦健診の際にご質問下さい。

  • Q.9

    実際の無痛分娩の流れについて教えてください。

    A.

    34週ごろ妊婦健診でお渡しする「分娩誘発・促進剤使用の説明・同意書」と、産科麻酔外来でお渡しする無痛分娩の説明・同意書のいずれも内容を十分ご理解の上、ご署名しておいてください。

    自然陣発(破水)の場合

    • 1. 陣痛が始まったら病院に連絡をして、助産師、産婦人科医の指示に従って入院してください。
    • 2. 入院時に署名してある無痛分娩と子宮収縮薬(促進剤)使用の同意書を病棟の助産師に提出してください。これにより麻酔科に無痛分娩希望の産婦さんが入院されたと連絡が入りますので、いつでも無痛分娩を開始できるように準備を始めます。
    • 3. 分娩の進行に合わせて、麻酔科医が診察に伺い産婦さんと相談します。麻酔が必要と感じたら、病院スタッフにお伝えください。適切なタイミングで麻酔を開始します。

    分娩誘発(計画分娩)の場合

    • 1. 子宮口がある程度開いてから分娩誘発(計画分娩)にすることが多いので、入院日は産婦人科医と相談して決めます。
    • 2. 入院時に署名してある無痛分娩と子宮収縮薬(促進剤)使用の同意書を病棟の助産師に提出してください。
    • 3. 入院当日は内診の後、必要に応じて前処置(ダイラパン挿入)を行います。この処置だけで分娩が発来することもあります。
    • 4. 翌朝から点滴による子宮収縮薬の投与を開始します。麻酔科医が診察に伺い産婦さんと相談します。麻酔が必要と感じたら、病棟スタッフにお伝えください。適切な時期に麻酔を開始します。

    ご注意ください!

    当初無痛分娩を希望しなかったものの、やはり無痛分娩を希望される産婦さんにも、可能な限り対応しますが、同意書のご提出がないと、希望されてから説明や準備を始めるので、無痛分娩開始までにかなりの時間がかかってしまいます。同意書を提出しても、病院スタッフが無理に勧めることはなく、無痛分娩を受けるかどうかは、産婦さんに決めていただきます。サポートが必要なときの選択肢として、準備しておいたほうが安心できると思います。

  • Q.10

    無痛分娩を開始するタイミングについて教えてください。

    A.

    無痛分娩を希望する産婦さんにも、さまざまな考えがあります。「ぎりぎりまで頑張ってどうしても痛みに耐えられないときだけ助けてほしい。」という産婦さんも、「痛みに弱いのでなるべく早く始めてほしい。」という産婦さんもいらっしゃいます。当院では可能な限り産婦さんの希望を尊重して適切な時期に無痛分娩を開始していますが、いくつか知っておいていただきたいことがあります。

    計画分娩にせよ自然陣痛にせよ、陣痛の最初から耐えられないほどの痛みになることは稀で、多くの場合、生理痛のような痛みが徐々に強まり、非日常的な痛みに変化してきます。陣痛周期が10分ごとに規則正しくなったら分娩は開始とし、それから子宮口が10cmに全開大するまでを分娩第1期、その後赤ちゃんが生まれるまでを分娩第2期といいます。多くの産婦さんは、子宮口が3~4cm開大で痛みを感じるようになり、子宮口が5cmぐらい開いたあたりで無痛分娩の開始を希望されます。実際この時期から無痛分娩を開始すると、その後の分娩経過が順調なことが多いです。

    なかには子宮口が2〜3cm程度の時点で無痛分娩の開始を希望される産婦さんもいらっしゃいます。最近は麻酔法の進歩により、早めに無痛分娩を開始しても、子宮口が10cmに全開大するまでの時間に影響を与えないとの報告もあります。当院では、子宮口が5cm程度に開いてから無痛分娩を開始することをお勧めしていますが、規則正しい陣痛があり、分娩が開始していれば早めに無痛分娩を開始することは可能です。

    逆にぎりぎりまで頑張って、子宮口が10cmまで開大してから無痛分娩を希望される産婦さんもいらっしゃいます。このような場合、痛みのせいで麻酔のための上手な姿勢がとれないことがあります。またなんとか無痛分娩を開始しても、麻酔の効果が現れる前に赤ちゃんが生まれてしまうこともあります。ですから最後まで頑張りぬく自信がないときには、全開大する前(子宮口が8cmぐらいの時点が目安)に無痛分娩を開始しておいたほうが良いかもしれません。いずれにしても、無痛分娩を希望される産婦さんが入院された場合には、麻酔科医はいつでも無痛分娩を開始できるように準備を始め、実際に無痛分娩を開始する時期は産婦さんと相談しながら、適切な時期より無痛分娩を開始します。

    分娩 グラフ

  • Q.11

    無痛分娩中はどのように痛みをコントロールするのですか?

    A.

    硬膜外麻酔単独で無痛分娩を行う場合は、最初に十分な鎮痛が達成されるまで局所麻酔薬を何回かに分けて投与しますが、効果が現れるまで10分から20分程度かかります。一方CSEAで無痛分娩を行う場合は、脊椎麻酔の効果で麻酔開始から5分程度で十分な鎮痛が達成されます。いずれにしても、初期鎮痛が達成されるまでは麻酔科医が付き添いますが、その後は赤ちゃんが生まれるまで、PCA(Patient controlled analgesia)という方法を用いてご自分で痛みをコントロールしていただきます。
    PCAとは日本語では患者自己疼痛管理と訳されますが、コンピューター制御のPCA装置を用いて、産婦さんが痛みを感じた時点でボタンを押すことにより、自動的に薬剤が硬膜外カテーテルから注入される仕組みです。またPCA装置はコンピューター制御により、いくら産婦さんがボタンを押しても予め決められた量以上は薬剤が注入されないように制限されているので、薬剤が過量に投与される心配はありません。PCAボタンを押すと大体の場合、5分程度で痛みが和らいできますが、途中から薬剤の投与量が足りなくなってくる場合や、分娩の進行に応じて痛みの性質が変化してより強い薬剤が必要となってくる場合もあります。もしボタンを押してしばらく待っても痛みが十分に和らがない場合は、病院スタッフにお申し出ください。必要に応じて薬剤の追加投与を麻酔科医が行います。

    PCAでは、ある程度、痛みを自分の希望する範囲で調整することも可能です。

    もし痛みをなるべく少なくしたいなら、痛みを感じ始めた時点でなるべく早めにボタンを押してください。そうすると、少ない量の薬剤で痛みがコントロールできるので、副作用も少なくなります。
    もしある程度の痛みを感じながら分娩をしたいのであれば、少しボタンを押すのを我慢してもかまいません。しかし我慢しすぎると、その痛みをとるために、より強い薬剤が必要となって、かえって上手にいきめなくなることもあるので注意が必要です。

    PCA

  • Q.12

    無痛分娩で痛みはどの程度楽になるのですか?

    A.

    痛みは主観的なものであり、痛みの感じ方には個人差があります。また同じ人でも、そのときの気持ちの持ちようで痛みを少なく感じることもあれば、より強く感じることもあります。

    このような痛みを客観的に評価するひとつの方法として、VASスコアやNRSスコアという方法があります。これは「想像できる最悪の痛みを10点満点とし、痛みが全くない状態を0点とした場合に、今感じている痛みは何点ぐらいですか?」と質問して痛みを点数化する方法です。この方法を用いると、無痛分娩を受けずに分娩を経験した妊婦さんの分娩時の痛みの程度は8点から10点ぐらいですが、無痛分娩を受けた妊婦さんの場合は1点から3点ぐらいですので、痛みは半分以下になると言えます。ただし10点の痛みが1点になったとしても、減った9点に注目して楽になったと感じることもあれば、残った1点に意識が集中してしまいまだ痛みが残っていると感じることもあります。このような場合に0点を目標にして痛みを完全になくそうとすると、薬の使用量が必要以上に増えてしまい、いくら安全な方法でも副作用が出てきてしまいます。無痛分娩といっても痛みを完全になくすわけではないことを十分に理解しておいてください。

    score

  • Q.13

    無痛分娩はお産の進行に影響しますか?

    A.

    自然の陣痛を待ってから無痛分娩を開始した場合でも、子宮口が全部開く(全開大)までの分娩第1期に関しては、その進行に大きな差はありません。むしろ無痛分娩を開始した後に急激に分娩が進行することもあります。しかし、子宮口全開大後から赤ちゃんが生まれるまでの分娩第2期は進行が遅れることがしばしば起こります。最後まで子宮収縮薬を使用しなくて済む場合もありますが、当院の無痛分娩では61%の方が陣痛を強めるために子宮収縮薬を必要とし、42%の方が鉗子分娩となっています。子宮収縮薬の使用や鉗子分娩の方法やリスクについては、「分娩誘発・促進剤使用の説明・同意書」と「当院における分娩方針~陣痛促進・鉗子分娩についての説明書~」に記載してありますので、ご覧ください。出産場所を決定する前に分娩方針を確認したいとお考えの方は、初診時にもこの書類をお渡ししますので、お申し出下さい。

    また無痛分娩開始後30分程度で、胎児心拍数が低下することがあります。多くの場合心拍数は回復しその後の無痛分娩の進行には問題ありませんが、心拍数が回復しない場合には緊急帝王切開術を施行することがあります。

  • Q.14

    無痛分娩では子宮収縮薬(分娩誘発・促進剤)が必要になりますか?

    A.

    分娩誘発(計画分娩)の場合には最初から子宮収縮薬が必要です。自然の陣痛を待ってから無痛分娩を開始した場合は最後まで子宮収縮薬を使用しなくて済む場合もありますが、麻酔開始後に分娩の進行が滞る場合もあります。当院では無痛分娩の61%の方が陣痛を強めるために子宮収縮薬を必要としました。そのため、自然陣痛後の無痛分娩を希望される産婦さんにも、分娩の進行が滞って促進剤を使用する場合に備えて、あらかじめ「分娩誘発・促進剤使用の説明・同意書」をお渡ししますので、入院時にご提出をお願いしています。実際に子宮収縮薬が必要となった際には、あらためて産婦人科医から説明をいたします。

  • Q.15

    無痛分娩のせいで上手にいきめなくなることもありますか?

    A.

    硬膜外麻酔単独での無痛分娩にせよ、CSEAでの無痛分娩にせよ、痛みは十分にコントロールされていても、子宮の収縮を感じながらご自分で上手にいきめることが理想です。

    しかし、なかには麻酔が効きすぎて、いきむタイミングがわからなくなり産婦さんもいます。このような場合は分娩の進行が遅れることもあり、途中から薬の量を減らしたり、薬の濃度を薄くしたりすることにより、麻酔が効き過ぎないように微調整をします。たとえ薬が効きすぎていきむタイミングがわからなくても、産婦人科医・助産師が適切にアドバイスをします。

  • Q.16

    無痛分娩が赤ちゃんに与える影響について教えてください。

    A.

    当院の無痛分娩は局所麻酔で行っており、使用する局所麻酔薬の量も非常に少ないので、赤ちゃんへの影響はとても小さいですが、稀に薬の影響で元気がなくなることがあります。しかし出生後の処置によって回復します。

    無痛分娩によってお母さんの血圧が下がったりした場合には、赤ちゃんにも影響が及ぶことが考えられますが、血圧低下した時には点滴を増やすなど適切に管理すれば、赤ちゃんの状態が悪くなることはないと考えます。

    無痛分娩でなくても、赤ちゃんの娩出にお手伝いが必要になれば、鉗子分娩や吸引分娩を行います。無痛分娩ではその可能性が高く、当院の無痛分娩では42%の方が鉗子分娩となっています。鉗子分娩では赤ちゃんのお顔に鉗子の痕がしばらく残ることもあります。もし、瞼に鉗子の痕が付いた場合には眼科医の診察を受けていただきますが、これまで視力低下が心配されるような赤ちゃんにはいませんでした。

  • Q.17

    その他無痛分娩のリスクについて教えてください。

    A.

    無痛分娩自体は十分に安全な医療として確立されていますが、医療行為である以上いくつかの合併症が起こることがあります。

    a.分娩遷延

    分娩第1期には大きな影響はありませんが、子宮口全開大後の分娩第2期が停滞して子宮収縮薬による陣痛の促進(61%)、鉗子分娩・吸引分娩(42%)が増加します。しかし、当院のこれまでのデータでは無痛分娩によって分娩中に帝王切開になる産婦さんが、増えることはありませんでした。

    b.血圧低下

    無痛分娩を開始した直後にお母さんの血圧が低下することがあります。点滴を増やすなど適切に対応することで、お母さんや赤ちゃんに大きな問題を発生することはないと考えます。

    c.胎児心拍数の低下

    無痛分娩を開始した直後に赤ちゃんの心拍数が低下することがあります。お母さんに酸素を投与するなど適切に対応することで、赤ちゃんに影響することはほとんどありませんが、胎児心拍数が回復しない場合には、緊急帝王切開を行うことがあります。

    d.頭痛

    局所麻酔の影響で分娩後に頭痛を起こす可能性が1%程度あります。この頭痛は立ったり、座ったりすると強くなるので、授乳が辛いと感じることがありますが、多くは1週間以内になくなります。頭痛がひどい場合には、積極的な治療法もありますので、我慢せずにご相談下さい。

    e.発熱

    硬膜外麻酔の影響で38度以上の発熱を起こすことが10%程度あります。

    f.かゆみ

    脊椎麻酔の影響でかゆみを感じることが50%ぐらい起こります。多くの場合、がまんできないようなかゆみではありませんが、冷やしたタオルをあてると和らぎますので、遠慮せずに病院スタッフへお伝えください。

    g.腰痛、下肢の神経障害

    腰痛や下肢の神経障害は分娩後にまれにみられる合併症ですが、無痛分娩との直接の因果関係は証明されていません。

    g.排尿障害

    無痛分娩に伴って一時的に排尿障害が起こることがありますが、症状が退院時まで持続することは非常に稀です。

    h.その他重篤な合併症

    無痛分娩による重篤な合併症は非常にまれです。
    これら合併症についての詳細は、妊娠34週ごろの妊婦健診および産科麻酔外来で「当院における分娩方針~陣痛促進・鉗子分娩についての説明書~」と「無痛分娩の説明・同意書」をお渡し、説明いたします。
  • Q.18

    無痛分娩中の制限について教えてください。

    A.

    無痛分娩中は以下のような制限事項があります。

    a.飲食

    誤嚥性肺炎の危険性を減らすために、無痛分娩中は原則として食事を禁止しております。少量の飲水は可能ですが、点滴からも水分を補います。ただし、分娩時間が長くなる場合には、必要に応じて軽食をとっていただくことがあります。

    b.歩行

    麻酔による運動神経麻痺で歩行中に転倒する危険があります。麻酔開始後は原則としてベッド上安静とします。

    c.排尿

    無痛分娩中はベッド上安静となるのでトイレにいけません。また麻酔による影響で排尿困難になることがあります。必要に応じて助産師が尿道に細い管を入れて導尿します。
  • Q.19

    無痛分娩を選択するメリットは何でしょうか?

    A.

    出産は女性の一生にとって、非常に大切なイベントです。病院などの施設で出産することで、出産の安全性は飛躍的に向上しましたが、それでも出産はさまざまな危険と隣り合わせであることに変わりはありません。無痛分娩を担当する麻酔科医の仕事は、痛みを取り除くことだけではありません。産婦人科医、助産師とともにチーム医療で分娩のサポートをするので、不測の事態が発生した際の対応でも、産婦さんや赤ちゃんにとっても大きなメリットがあると考えます。

    また日本では「産みの苦しみ」という言葉があるように、痛みに耐えてお産をすることによって子供への愛情が深くなるという考え方があります。しかし、米国では分娩の痛みを抑えることにより、生まれてくる子供を慈しみながら分娩に臨むことで子供への愛情がより深まるとも言われています。無痛分娩では、痛みで取り乱すことなく落ち着いて新しい家族を迎えることができることもメリットかもしれません。また、分娩中の痛みを和らげることにより、血圧や血糖値の上昇を抑える効果もあります。こうしたご病気を持ちながら出産される方には、メリットの大きい分娩方法といえます。さらに無痛分娩では陣痛による痛みをこらえることで起こる体力の消耗を避けることができ、産後の育児をスムーズに開始できるメリットもあり、特に分娩時間が長くなる傾向のある高齢の産婦さんにはメリットが大きいようです。

  • Q.20

    費用について教えてください。

    A.

    当院では無痛分娩の費用として、通常の分娩費用に加えて一律15万円をいただいております。このなかには無痛分娩に使用する特殊な針や麻酔薬の料金も全て含まれています。麻酔を開始してから分娩までに長い時間がかかった場合でも超過料金はいただいておりません。また夜間や休日でも無痛分娩の割り増し料金はいただいておりません。(ただし分娩費用は通常通り加算されます。)なお、産科麻酔外来の受診などを通して無痛分娩の準備をしておいても、実際に麻酔を開始しない限り費用は発生いたしません。

― その他 ―

  • Q.1

    分娩制限は行っていますか?

    A.

    現在分娩数の上限を定めております。
    妊娠8週以降に分娩予約を受け付けておりますので、受診時にお申し出ください。

    分娩予約状況はこちら
  • Q.2

    他院で妊婦健診を受けていて心配なことがありますが、相談外来を受診できますか?

    A.

    相談外来は、原則的に当院で妊娠・分娩管理を行う方を対象としています。
    もしご相談がありましたら、かかりつけ医療機関より紹介状をお持ちになって受診してください。

  • Q.3

    里帰り分娩を希望していますがいつまでに戻ってくればよいですか?

    A.

    妊娠初期に分娩予約を取っていただき、妊娠32-34週ごろより当院で妊婦健診を受けて下さい。

  • Q.4

    女性の先生に診てもらいたのですが?

    A.

    外来予約表を確認の上、女性医師が外来を担当している日をご予約ください。
    ただし、学会出張等で急遽変更になることがありますので、ご承知ください。
    なお、分娩は当番医師、当直医師が担当になることもあり、その限りではありませんので、ご了承ください。

  • Q.5

    バースプランを作ることはできますか?

    A.

    妊娠初期に説明し、用紙をお渡しします。妊娠後期の助産師外来受診の際にその内容の確認と相談を行います。

  • Q.6

    退院後育児に不安を感じたら、どうしたらよいでしょうか?

    A.

    お母さんの状況にあわせた外来受診をご提案しますので、まずは産婦人科外来までお電話下さい。

  • Q.7

    妊娠リスクチェックはとは何ですか?

    A.

    妊娠のリスクをご自分でチェックすることで、予め妊娠のリスクについて知ることが出来ます。
    当院では、妊娠したらまず、お母さんと赤ちゃんの安全で安心な妊娠・出産のために、妊娠初期リスクをチェックすることをおすすめしています。
    また、リスクチェックの結果、低リスクと判定された方は、当院産科セミオープン登録施設に、直接受診していただけます。

    妊娠リスクチェックはこちら